3-2。結果だけを見たら、接戦だったように見えるかもしれない。
ただ、内容には雲泥の差があった。
2017年7月15日(土)に、国際親善試合「明治安田生命 Jリーグワールドチャレンジ 2017」が埼玉スタジアムで行われ、ドルトムントが浦和レッズに3-2で勝利を収めた。
■本気メンバーのドルトムント
まず最初に、ケガ人を除いてほぼフルメンバーで来日してくれたドルトムントに感謝したい。
移籍が噂されているオーバメヤンやソクラテス、怪我明けのゲッツェ等、正直わざわざ来日してくれるのか半信半疑だった。
しかし、ふたを開けてみれば、怪我で離脱中のロイスとヴァイグル以外は、ほぼフルメンバー。
これだけのメンバーが来日してくれるのは、クラブW杯以外ではほとんどあり得ないのではないだろうか。
親善試合にもかかわらず、58,327人もの観衆が集まったことが、それを物語っている。
■世界レベルの圧巻プレス
さて、試合を振り返っていこう。
前半開始から、ドルトムントが圧倒的なボールポゼッションを見せ、浦和を押し込む。
前日に来日したのが浦和で、レギュラーシーズンを戦っているのがドルトムントなのではないかと錯覚するほど、ドルトムントのプレスが早い。
ボールを失った瞬間に、複数の選手が一気にプレスをかける。
パススピード、トラップの質、プレスをかけるコースの的確さ、改めてこれが世界レベルなのだと感じさせられた。
中でも、浦和GK西川に対しての、ドルトムントFW陣の的確なプレスには目を見張るものがあった。
浦和の攻撃は、GKの西川から3バックの3人のDF陣へ、ショートパスをつなぐことで始まる。
西川が大きくボールを蹴りだすのは、ゴールキックの際か一発でDFの裏を狙う時が多く、基本的にはショートパスをつなぐことが多い。
昨日の試合では、ドルトムントのプレスが早かったため、浦和DF陣がプレッシャーに耐え切れず、GKの西川にバックパスを出す場面も多かった。
その際、いつもの浦和なら、西川から他のDF、もしくはバックパスを出したDFにパスが通る。
しかし、昨日は違った。
ドルトムントのFW陣のうち1人が、バックパスを出したDFへのパスコースを切りながらすぐに西川にプレスをかけていた。
更に、その他2人のFWも連動するように浦和の残りのDF2人へのパスコースを切っていた。
結果として、西川は大きく蹴りだすしか選択肢がなくなり、蹴りだしたボールはラインを上げたドルトムントの屈強なDF陣がしっかりと跳ね返していた。
Jリーグで、このようなプレーはそうそうお目にかかれない。
西川にプレスをかけるFWはいても、DFへのパスコースを切りながらプレスをかけているFWはなかなかいない。
残りのFWやMFが浦和の他のDFへのパスコースを切るようなフリーランニングをしていることはより少ない。
当然、浦和は日本では有数のビッククラブであり、チーム力、戦術ともに高いレベルにあり、優勝を狙うチームである。
そのため、他のJ1チームが真っ向勝負で前線からプレスをかけてくるということ自体が少ないのは理解できる。
しかし、だ。
ドルトムントが今回示してくれたプレスの質の高さを、JリーグのFW陣はもっと勉強しなければならないと改めて感じた。
前半20分あたりまでのボールポジション、浦和は実に30%未満だった。
Jリーグで浦和がボールを保持できないなんてことは、殆どない。
その浦和が前半途中まで、前日に来日し時差ぼけ真っ只中の選手たち相手に、ほぼ何もできなかったのだ。
浦和の心臓である柏木がほとんど前を向いてボールを持てず、FWの興梠やラファエル・シルバもボールを収められない。
前半14分、カストロのFKからバルトラの打点の高いヘディング。
惜しくもクロスバーに阻まれたが、これが決まっていれば、一方的な試合展開もあり得たかもしれない。
幸いにも、ドルトムントのメンバーは、暑さと疲労から、前半の途中から足が止まってきていた。
その後、幸運にも先制点を奪ったのは、浦和だった。
CKから興梠がDFを振り切ってゴール。
浦和は前半を1-0とリードで折り返す。
■モル一人にやられた浦和
後半から、両チーム多くの選手を入れ替える。
ドルトムントは、主力の多くを前半で下げ、後半からは若手を積極的に投入した。
その若手の中で、異彩を放ったのは、トルコのメッシの異名をもつ、モルだった。
同点弾、そして逆転弾共に、衝撃の2発だった。
同点弾に関しては、日本代表の槙野を完全に振り切り、同じく日本代表の西川のタイミングを外してゴールにボールを運んだ。
得点が生まれる雰囲気がなかった中で、完全に個の力だけでゴールを奪ってしまった。
逆転弾もモルの個人技で浦和を切り裂き、シュメルツァーの折り返しを、最後はまたしてもモルが冷静に決めた。
たったの4分間で試合をひっくり返してしまったのだ。
その後、ドルトムントはCKから失点をするが、試合終了間際に、浦和MF遠藤の信じられないクリアミスから、シュールレが冷静にゴールを奪い、試合を決めた。
シュールレのシュートもGK西川のニアの肩口を抜くシュートで、簡単にやっているが、日本人のストライカーだとほとんど決められる選手はいないのではないだろうか。
浦和にもチャンスがなかったわけではない。
ラファエル・シルバが1回、武藤が2回、関根が1回、決定的なシーンを外している。
ラファエル・シルバと武藤に関しては、完全ドフリーでのGKとの1対1で、外しているのだから、話にならない。
試合終了後、浦和の選手から、通用したところもあった、とか、チャンスを決めていれば勝っていた、などのコメントがきかれた。
本当にそう思っているのだろうか?
浦和の攻撃が一部通用したのは、ドルトムントが浦和の攻撃パターンや、選手の特徴を知らなかっただけだろう。
そもそもドルトムントのレギュラーが出場し、足が動いていた前半開始からの数十分は、全くと言っていいほど、歯が立たなかった。
まともに対策されたら、通用するとは思えない。
また、チャンスを決めていれば、という話。
何度も聞いているが、決められないから負けていることをいい加減自覚するべきだ。
モルも、そしてシュールレも、難しいシュートを難なく決めている。
ゴール前での最後の部分、ここをもっと突き詰めていかない限り、世界との差は縮まらない。
正直、浦和の選手から、スコア以上の差があった、等の言葉が聞かれれば嬉しかったが、そのような声は聞こえなかったのは残念である。
最後に、勝利を収めたドルトムントだが、やはりDF陣には非常に不安が残る。
浦和攻撃陣に何度か裏を取られ、決定的なシーンを作られていた。
また、攻撃に関しても、個人技頼りで創造性が見られなかった。
このままでは、ブンデスもCLもマズイことになる。
まだまだチーム始動1週間ということで、これからだとは思うが。
昨日の試合を見て、香川の出番が増える、そんな予感を感じた。
*【浦和レッズ】年間勝点1位の面影なく、守備陣崩壊で早くも優勝戦線離脱~2017シーズン前半戦 順位・結果~はこちら